掲載日 2010/9/16
1.HACCPの開発
アポロ計画で、100%安全な宇宙食の開発を求められた企業が、従来の最終製品の抜き取り検査で100%安全を保証するのは難しいと判断し(多数の微生物を検査すると製品の相当量を検査に使用する)、
新たに危害分析および重要管理点の2つの考え方から成る食品の衛生管理システム(HACCPシステム)を開発しました。
原料から最終製品の貯蔵までの製造工程で起り得る全ての危害を予測、分析(危害分析)、その危害を排除、許容範囲まで減少し得る工程とそこでの処置法を決めて重要管理点とし、設定した管理基準に合致しているかを監視、記録、悪い結果の兆候が見られた段階で素早く対策を講じて「食品危害の発生を未然に防止しようとする衛生管理システム」です。従来の食品安全の考え方は製造環境を清潔にすれば安全な食品製造が出来るだろうとの考えで、製造環境の整備、衛生確保に重点を置き、食品の安全性の確認は最終製品の抜取り検査(微生物培養等)により行うものでした。HACCPシステムは製造工程中で食品安全に影響する要因を明確にし、監視、制御することによって食品安全を確保する点が従来の考え方とは異なっています。HACCPシステムはその有効性が高く評価され、1993年FAO(食料農業機構)WHO(世界保健機構)合同の食品規格委員会であるコーデックス規格委員会がHACCPを国際標準化、1997年にはWHOが国際的な採用を奨励したことから、米国、EUで義務化され、日本でも1996年「総合衛生管理製造過程の厚生労働大臣承認制度が施行され、そのなかにHACCPを取り入れています。2005年には食品安全マネジメントシステムとして国際的な民間規格ISO22000が発行され、食品安全のための要求事項としてHACCPが採用されました。これらは食品安全の衛生管理システムとしてHACCPが優れていると評価されたことを示しています。
(注1)HACCP:危害分析(HAZARD・ANALYSIU)、重要管理点(CRITICAL CONTROL POINT)。
(注2)ISO22000:食品安全のマネジメントシステムとして、衛生管理の仕組みにHACCPを取り入れたものです。但し食品安全だけを扱い、品質は含みません。
2. HACCPシステム導入の手順と原則
HACCPの導入(実施)には、製品ごとにHACCPプランといわれる衛生管理マニュアルの作成が必要で、盛り込むべき必須の手順・原則があります。手順とは①HACCPチームを編成する②製品の特徴を確認する③製品の使用法を確認する④製造工程一覧図、施設の図面および標準作業書を作成する⑤製造工程一覧図を現場で確認する等の5手順です。7原則とは①危害分析②重要管理点の設定③管理基準④モニタリング方法⑤改善措置⑥検証方法⑦記録の維持管理方法等を事前に決めておくことです。よく考えると、食品衛生管理に際し誰でも考える内容です。7原則のうち最も基本になる原則は危害分析です。その結果に基づき重要管理点、管理基準、モニタリング法、改善措置、検証方法が決まってくるからです。7原則詳細は以下のとおりです。
(原則-1)危害分析:原材料、製造工程のどこで、危害発生の可能性があるかを考え(生物的危害(食中毒細菌感染、増殖等)、化学的危害(農薬、抗生物質等)、物理的危害(金属、石等異物))、その原因および防止策を明らかにする作業です。
(原則-2)重要管理点の設定:危害発生防止上、極めて重要な管理点(手順、操作、工程等)を重要管理点に設定します。後工程では確認、対処不可能な項目、工程を念頭に、原料から最終製品の貯蔵までの適切な箇所に設定します。
(原則-3)管理基準の設定:モニタリング時に確認する重要管理点の指標の許容範囲を定めたものです。官能指標(色調、透明度、光沢、臭気、粘度等)、化学的検査値(酸濃度、塩濃度、pH等)、物理的測定値(温度、時間、圧力、湿度、濃度、強度等)等測定可能な指標が管理基準として使用されています。
(原則-4)モニタリング方法:重要管理点で指標が管理基準内にあるか、外れているかを確認する作業です。
(原則-5)改善措置の設定:管理指標が基準から外れている場合にとるべき措置(原因究明、復旧作業、管理指標が基準から外れていた間に製造された製品の取り扱い等)を決めたものです。
(原則-6)検証方法の設定:HACCPシステムが適切に機能しているか、一般的衛生管理事項(注3)が適切に実施されているか定期的に検証するため、検証頻度、検証結果に基づく措置、検査結果の記録方法を定めたものです。
(原則-7)記録および文書の保管:HACCPシステムにとって、記録の管理は必須です。最初に定めた記録項目、記録方法、担当者、記録様式(いつ・どこで・誰が・何のため・どの基準に準拠で・行った作業)に記録・保管します。この記録は衛生管理法の見直し資料、事故発生時の原因究明、更にはクレームに対する証拠等に利用できます。
(注3)一般的衛生管理事項:作業環境を衛生的に確保するための管理事項のこと。その実施はHACCP導入の前提となっています。重要管理点での監視項目とは別に、施設・設備および機械・器具類の衛生管理、食品の取り扱い、従業員の衛生管理と教育訓練等の食品の衛生管理にかかわる一般的共通事項を管理事項として決め、その運用(どこで、何を、誰が、何故、何時、どのように)を定めた衛生標準作業手順書にしておきます。
3. 国内および海外の導入状況
各国のHACCPシステム義務化導入の戦略は各国の事情に合わせて展開されています。EUでは全食品に義務化して、可能な部分から実施。米国は水産品、食肉、ジュース等一部を義務化、日本の「総合衛生管理製造過程の厚生労働大臣承認制度」は一部品目を対象としたもので、義務ではなく食品事業者の任意です。国内および海外(米国、欧州、豪州)におけるHACCPの詳しい導入状況、課題等は厚生労働省の調査報告「食品の高度衛生管理手法に関する実態調査について」(平成21年3月)記載されています。
4. HACCPの認証
国、自治体、業界団体、登録審査会社等がHACCP認証を行っています。国の認証例は「総合衛生管理製造過程の厚生労働大臣承認制度」、「対米、対EU水産食品承認制度」です。自治体の例は「東京都食品自主管理認証制度」等多数あります。
三菱化学グループの三菱化学メデイエンスはHACCP関連事業として、次の業務を受託しています。
・HACCP/GMPシステム構築支援(総合衛生管理システムの構築支援)
・東京都食品自主管理認証制度および群馬県の食品自主管理認証制度指定審査事業者として食品営業施設の認証審査
また食品衛生検査事業として、微生物検査、理化学検査、残留農薬検査、ノロウイルス検査、遺伝子組み換え作物分析等を受託しています。
三菱化学エンジニアリングはHACCPに対応した食品工場の建設に豊富な経験を有していますので、施設改修提案も可能です。
(資料)HACCP関連ホームページ
農林水産省 HACCP法ホームページ
財団法人食品産業センター HACCP関連情報データベース